応用薬物治療部門

研究室のサイトへ

薬物治療評価の出来る薬剤師の養成と薬物治療に役立つ研究を

ご挨拶

 6年制薬学部教育の究極の目標は、現在医療現場で必要とされている臨床薬剤師の育成です。すなわち、医薬品、薬物療法に対して十分な知識を持って医師に提案できる、医師から助言を求められる実力を備えた薬剤師、そして、医療現場では待ったなしの決断が要求されるのでそのような能力を備え、病棟や窓口で患者さんの問題点、あるいは病院や薬局における問題点を自分で発見し、能動的に調べて解決してゆく能力を持った問題発見・解決型の薬剤師の育成を目指す必要があります。

 当研究室は、上記の目標を達成できるよう、薬物治療評価の出来る薬剤師となるための教育に中心的に取り組むと共に、臨床薬学教育研究センターの他の部門と協力して4年次の事前実習指導、5年次の実務実習指導に当たります。研究としては、既存の薬物治療の評価や新規薬物治療の開発に役立つ研究を行います。このような研究を通して物事を深く考えていく能力を開発することも、上記目標達成に役立つと考えます。

研究概要

臨床と基礎から、薬物治療の評価と新規薬物治療の開発を目指す

抗がん薬の副作用の自己組織化マップ(SOM)を用いたビジュアル化と解析

 抗がん薬は多彩な副作用を示すことから、副作用情報が十分に把握出来にくい場合がある。また、情報源である添付文書は文字・数字情報が中心であり、多くの同効薬の医薬品情報に関する全体像や医薬品間での違いを把握することは容易ではない。そこで、副作用情報をビジュアル化すればある程度総合的な把握や比較が容易になることが期待されることから、有力なパターン認識手法であるKohonenの自己組織化マップ(self organizing maps; SOM)を用いてビジュアル化を行い、副作用の解析研究を行っている。がん分子標的薬について、副作用の「高血圧/血圧上昇」を発生頻度でビジュアル化した図を示す。

血管内皮増殖因子(VEGF)や血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)を阻害する薬剤で高いものが多いことが一目で確認できる(赤→桃色→橙→黄→緑→淡青の順で頻度が低い。青は発現なし)。(濵本知之ほか、YAKUGAKU ZASSHI134(10)、1069-1080、2014より引用)

〔東北医科薬科大学医薬情報科学教室との共同研究〕

医療現場での疑問点や問題点を解決するための研究

 医療従事者、あるいは5年次事前実習での学生が感じた医療現場での疑問点や問題点をテーマとして、解決するための研究を医療機関と協力して行う。

ビグアナイド系糖尿病治療薬メトホルミンの抗がん作用機序の解明

 近年、がんの発症・進展と糖尿病あるいは糖尿病治療薬との関連が注目されており、メトホルミンの投与を受けた2型糖尿病患者で、がん罹患率や死亡率が低下することが報告されている。さらに、その報告は糖尿病以外の患者でもなされている。しかし、その抗がん作用機序の全容は未だ明らかになっていないため、現在、甲状腺がん細胞株を用いて検討を行っている。また、他の薬剤によるメトホルミンの作用の増強も報告されており、その分子機序を明らかにする研究も行う予定である。

〔長崎大学原爆後障害医療研究所 放射線リスク制御部門 放射線災害医療学研究分野との共同研究〕

感染症の原因菌やその保有する耐性因子を迅速に診断するための研究

 感染症は臨床症状、身体所見、一般検査(血液・生化学)所見、画像所見などから総合的に診断されるが、適切な抗菌薬治療を行うには、原因微生物の同定と薬剤感受性検査が重要となる。ところが原因菌の同定とその薬剤感受性検査の結果が判明するのには数日を要するため、実際の初期治療には経験的治療(Empiric therapy)が行われているのが現状である。その際、原因菌やその薬剤感受性に合わない抗菌薬が投与されれば、感染症が悪化してしまう可能性がある。そこで、感染症の原因菌やその保有する耐性因子が迅速に診断できれば最初から最適な抗菌薬を使用することが出来、早期の治癒が望める。そのため、菌のDNAの特定の部位をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅し質量分析計(MS)で測定することで、原因菌やその保有する耐性因子を迅速に診断する方法に関する研究を行っている。

〔東邦大学医学部 微生物・感染症学講座との共同研究〕

抗がん薬によるがん細胞のアポトーシス誘導メカニズムの解析

 アポトーシスを起こした細胞は、核の凝集、断片化、細胞質の萎縮などの特徴的な形態的変化が誘導され、ダメージを受けた細胞の除去、発生、免疫システムの制御など多くの生物学的なプロセスに関わっている。これまで臨床で使用されてきた化学療法剤の多くは、がん細胞に障害を与え、死滅させることを目的としたものであった。最近の報告では、シスプラチン、アドリアマイシンおよびタキソールといった多くの抗がん薬がアポトーシスを誘導しているということが次々と明らかになっている。アポトーシスを起こした細胞では、それらがマクロファージによって認識され貪食されるため、最終的に炎症の起こらない細胞死を誘導する。よってがん細胞に対してアポトーシスを誘導する物質は、抗がん薬の候補となり臨床応用への可能性も考えらえる。現在我々は、種々の抗がん薬によるアポーシス誘導のメカニズムについての研究を行っている。

教員紹介

濵本 知之 教授 / 学位:博士(理学)

  • 研究分野:薬物治療評価(適応外使用、育薬、副作用解析含む)、薬剤師実務教育
  • 担当科目:臨床実習事前学習Ⅰ(4年前期)
    臨床実習事前学習Ⅱ(4年後期)
    薬物治療評価学(4年後期)
    病院薬局実習(5年)
    患者情報(6年前期)
    先端薬学特論(生命科学と疾患)(博士)
    臨床薬学特論(博士)
    応用腫瘍学特論及び演習(博士)

 薬学部も6年制となりました。6年制薬学部教育の究極の目標は、現在医療現場で必要とされている臨床薬剤師の育成です。すなわち、医薬品、薬物療法に対して十分な知識を持って医師に提案できる、医師から助言を求められる実力を備えた薬剤師、そして、医療現場では待ったなしの決断が要求されるのでそのような能力を備え、病棟や窓口で患者さんの問題点、あるいは病院や薬局における問題点を自分で発見し、能動的に調べて解決してゆく能力を持った問題発見・解決型の薬剤師の育成を目指す必要があります。
 私は、病院薬剤師としての経験を生かし、上記の目標を達成できるよう、この部門の教員と協力して薬物治療評価(副作用の早期発見も含む)の出来る薬剤師となるための教育に取り組むと共に、臨床薬学教育研究センターの他の教員と協力して4年次の事前実習指導、5年次の実務実習指導に当たります。

詳細を見る

増田 豊 教授 / 学位:博士(薬学)

  • 研究分野:分子細胞生物学、臨床薬学
  • 担当科目:臨床薬学II(3年)
    多職種連携教育(4年)
    臨床実習事前学習Ⅰ(4年前期)
    臨床実習事前学習Ⅱ(4年後期)
    薬物治療評価学(4年後期)
    病院薬局実習(5年)
    基礎薬学特論・演習(6年)
    臨床薬学特論・演習(6年)
    最終総合演習(6年)

 

詳細を見る

高木 彰紀 講師 / 学位:博士(薬科学)

  • 研究分野:臨床薬学、薬学教育、人工知能、医薬品情報
  • 担当科目:臨床実習事前学習Ⅰ(4年前期)
    臨床実習事前学習Ⅱ(4年後期)
    多職種連携教育
    薬物治療評価学(4年後期)
    病院薬局実習(5年)

 

詳細を見る

もっと詳しく

研究室のサイトへ