衛生化学研究室

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生命現象と環境を化学的に理解し、疾病から身を衛(まも)る

ご挨拶

人間はそれぞれ異なる環境のもとで生まれ育ち、それに適応しつつ生活しています。しかし、生来備わるその優れた適応機構も、あらゆる環境に対応できるわけではありません。例えば、400万年の人類史上初めて飽食の時代を生きる我々の前には、高体重(肥満)・高血圧症・高脂血症・高血糖症・高尿酸血症など全てに「高」のつく栄養過剰に基づく疾患が立ちはだかっています。そしてそれは、心筋梗塞や脳卒中などの心血管病はもちろん、各種新薬の開発にもかかわらず、以前として死因の第1位を占める悪性新生物(がん)の発症とも深く関係しています。また、地球温暖化やグローバル化に伴う新興感染症や環境汚染などの地球レベルの環境変化が、我々の日常生活に直接関わる時代となっています。その中で我々は、生命現象と環境の化学的(物質的)理解を通して、疾病から身を衛ることを目指しています。

研究概要

生体を代謝システムとして捉え、疾患に繋がる物質の流れを追う

含硫アミノ酸代謝の生理的意義とその破綻による病態を明らかにする

ホモシステイン(Homocysteine: Hcy)は、必須アミノ酸であるメチオニンからシステインを生合成する際の必須中間代謝物の含硫(硫黄原子を含む)アミノ酸ですが、その血中濃度上昇は心血管病発症の危険因子として知られています。しかし、その作用機序は不明です。血中Hcy濃度が高度上昇する遺伝性疾患にcystathionine beta-synthase(CBS)という酵素の欠損によるホモシスチン尿症がありますが、その患者は重篤な臨床症状(血栓塞栓症、精神発達遅延など)を示すため、我が国を含む先進国では新生児マススクリーニングにより早期発見され、直ぐに治療が施されています。一方、その下流にあってシステイン生合成の最終反応を担うcystathionine gamma-lyase(CTH)の先天的欠損は、臨床症状がないシスタチオニン尿症(血症)の原因とされています。そして最近、CBSとCTHは、極めて強力かつ多彩な作用を持つ生理活性ガスの1種である硫化水素(H2S)の産生酵素として特に注目されています。私たちは、遺伝子改変により新規に作成したCBS欠損マウスとCTH欠損マウスの生化学的解析・病態解析を通して、ホモシステイン・H2Sの生理的役割と病態への関与を調べ、その研究成果の臨床応用を目指しています。

必須・非必須微量元素の生体内の挙動や相互作用を調べる

私たちが日々摂取する食品には、有用な「栄養素」だけではなく、不要な、そして時に有害となる化学物質も含まれています。私たちは、食品に含まれる微量元素に着目し、生体内での各必須微量元素・非必須微量元素の代謝挙動や相互作用を明らかにすることが、食品の正しいリスク評価に繋がると考えています。例えば、必須微量元素のセレンは、同じ元素族の硫黄と似た性質を持ち、生体内で各種の主要酵素の構成因子として機能しますが、一方で水銀やヒ素などの毒性重金属の解毒にも働きます。これらの微量元素や金属が、どのように私たちの体に入り、どのように作用し、どのように解毒されるのか、その流れを調べることによって、それらの生理的意義・役割の解明を目指しています。

教員紹介

石井 功 教授 / 学位:博士(薬学)・博士(医学)

  • 研究分野:衛生化学、代謝生化学、病態生理学
  • 担当科目:薬学リテラシー(1年後期)
    食品衛生学 (3年前期)
    毒性学 (3年後期)
    環境科学 (3年後期)
    衛生薬学実習 (3年後期)
    公衆衛生学(4年前期)
    CBT補講(4年後期)
    基礎薬学/臨床薬学特論演習 (6年前期)
    生物系特論 (6年前期)
    最終総合演習(6年後期)
    環境毒性学徳論及び演習(修士)
    先端薬学(生命科学と疾患)特論 (博士)
    環境健康科学特論及び演習(博士)

アミノ酸代謝研究を行っています。

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赤星 軌征 准教授 / 学位:博士(医学)

  • 研究分野:衛生化学、代謝生化学、病態生理学
  • 担当科目:衛生薬学実習 (3年後期)
    環境科学(3年後期)
    公衆衛生学(4年前期)

2016年度10月に着任しました。

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鎌田 祥太郎 助教 / 学位:博士(薬科学)

  • 研究分野:衛生化学、代謝生化学、病態生理学
  • 担当科目:食品衛生学 (3年前期)
    衛生薬学実習 (3年後期)

 

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