老年薬学プロジェクト -武田財団特定研究助成-

公益財団法人武田科学振興財団特定研究助成による昭和薬科大学老年薬学プロジェクト始動!

プロジェクトリーダーである山本恵子教授に本学の二人の大学院博士課程の学生さんが、プロジェクトについてお聞きしました。

自己紹介

山本 恵子(左):千葉大学薬学部卒業後、同大学院修士課程中途退学。帝京大学薬学部、東京医科歯科大学医用器材研究所、東京医科歯科大学生体材料工学研究所を経て、2007年4月より本学教授(医薬分子化学研究室)。専門はメディシナルケミストリー。研究テーマは「核内受容体を標的とする創薬基盤研究」、「ビタミンDのメディシナルケミストリー」。昭和薬科大学老年薬学プロジェクトリーダー。

高田 剛(中):学薬学部卒業後、本学大学院博士前期課程を経て、2011年4月本学大学院博士後期課程進学(薬理学研究室)。研究テーマは「タンパク質リン酸化酵素を標的とした酸化ストレス疾患治療に向けての基盤研究」

大久保 真穂(右):本学薬学部卒業後、2012年4月本学大学院博士課程入学(薬物動態学研究室)。研究テーマは「精神神経疾患個別化治療開発のための薬物動態および効果にかかわる遺伝的要因の解明」。

まずプロジェクトの申請に至った経緯をお聞かせ下さい。

老化の過程では、加齢に伴い細胞の機能低下、臓器や器官の機能衰退、最後に個体の退行的変化が順次観察されます。高齢者は、メタボリック症候群、虚血性心疾患、骨粗鬆症、認知機能障害を伴う神経変性疾患を併発することが多いです。これら老年性疾患の成り立ちは複雑多岐ですが、結果として、本人が要介護状態を引き起こし、家族も含めてQOL(Quality of Life)を著しく悪化させます。私の研究室では、これまでも老年性疾患のメディシナルケミストリーならびにケミカルバイオロジーに関する研究を行ってきましが、ひとつの研究室による個別研究では老年性疾患の統合的理解には限界を感じていました。武田科学振興財団の特定研究助成によって本学教授陣による共同研究プロジェクトを立ち上げることにより、分子レベルから個体レベルをつなぐシステムバイオロジーを効率よく実施し、本学の将来を担う研究プロジェクトに発展させようと思い、申請することにしました。

それではプロジェクトの概要についてお聞かせ下さい。

プロジェクトに参画する教授を、専門分野に応じて3つのチームに編成し、研究を推進します。 1.ケミカルバイオロジーチーム:山本恵子(医薬分子化学研究室)田村 修(薬化学研究室) 生体内低分子リガンド誘導体の合成およびコンピューターシミュレーションを利用し、老年性疾患の治癒を目的とした分子標的薬合成や、加齢に伴い生じる生体内分子の過度の酸化によって起こる加齢臭を抑制する化合物の開発を行います。 2.老化機能解析チーム:伊東 進(生化学研究室)、渡邊泰男(薬理学研究室)、水谷顕洋(薬物治療学研究室) TGF-βシグナル欠損マウスの心血管系形成不全の分子病態メカニズムに迫り、細胞レベルでの酸化的ストレスによる神経変性疾患のメカニズムを探求します。またケミカルバイオロジーチームより供給された化合物について、骨リモデリング形成、血管形成及び神経変性保護を指標に創薬シーズとしての評価も行います。 3.老化メタボロミクスチーム:小椋康光(衛生化学研究室)、山崎浩史(薬物動態学研究室) 加齢特異的生体内代謝物を探索し、老化バイオマーカーの評価方法を確立したり、加齢に伴う薬物動態の変化を検証したりします。ヒト生理学的薬物動態モデルを利用して、物質投与量から循環血中濃度を推定して生理活性を予測する手法を活用します。

本学の研究上の特色とプロジェクトの関連についてお聞かせ下さい。

薬学部は本学に限らず、化学、生物、物理に通じた幅広い専門家集団です。特に本学では、「老化」というキーワードを設定した時に、老年性疾患の病態解明、生体内酸化及びアンチエージングに焦点を絞りましたので、化学合成、機能解析および薬物動態等「くすり」の開発基盤を明らかにするための必須の専門家が相互に協力して、特色を発揮できると思います。本学ならではの、独創性・先見性の高い研究成果が期待できます。

プロジェクトの推進による国際交流への展望はいかがでしょうか。

プロジェクトに参画している教授陣は、これまでも国際的な著名研究者を学内に招聘したり、長期あるいは短期の大学院留学生も受け入れていたりと、積極的な国際交流を行ってきました。これらの活動の一部は、日本学術振興会の二国間共同研究や短期外国人研究者招聘事業の支援を受けており、本学の国際競争力及び情報発信力の高さを示していると言えます。本プロジェクトにおいても、これまで同様に関連分野の著名研究者を招聘し、講演会を開催したり、外国人留学生の受け入れを推進したりと活動を継続していく予定です。

私たち大学院生にもたらされる効果をお聞かせ下さい。

平成24年4月に新設された4年制博士課程では、本学独自の研究成果に裏付けられた講義課目「先端薬学特論」を設置し、24年度は、本プロジェクトの参画研究者が講師陣を務める「老年薬学」を開講します。これまでお話した最先端の研究成果を直ちに教育に反映するシステムであり、本学大学院の独自のシステムです。すなわち本学では、最先端研究と教育とが密接に関連した態勢を整えています。これにより本学大学院でしか受講することのできない特徴的な講義を提供しています。

どうもありがとうございました。(高田、大久保)