医薬品情報部門

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患者と医療者を結ぶ医薬品情報―創出から応用まで―

ご挨拶

 医薬品情報学は、最新の情報科学を担う分野です。医薬品のトータルライフサイクルを通して、医薬品に関する問題解決を支援する情報のあり方を追求し、情報を適正に「集める・伝える・使う」の視点で捉え、医薬品の有効性・安全性の評価・解析、リスクコミュニケーションを推進する研究と実践に取り組んでいます。Evidence-based Medicine (Pharmacy) に則り、情報リテラシー(情報活用能力)を高め、薬物治療における意思決定の支援を行うことを目指しています。

 医薬品情報は、元を正せば、患者さんの疾患の治療や予防に役立てるためのものです。医薬品情報は、患者さんが医薬品を安全に服用し、医薬品から得られるベネフィットの最大化とリスクの最小化のために必要です。しかし、単に情報があっても十分に利活用されてはおらず、それには医療者の十分なサポートが必要で、医療の場において、シェアード・ディシジョン・メイキング(Shared Decision Making:SDM)が行われることが望まれます。SDMは、患者・医療者が必要な情報を共有した上で意思決定が行われることです。特に、服薬や薬物治療に関してはConcordance(コンコーダンス)と言われており、共通のコミュニケーションツールとして医薬品および薬物治療に関する情報は必須です。

 また、医薬品は、物性や化学構造などのモノグラフの情報を含み、それらを理解することは、薬剤師にとって重要なことです。医薬品の構造解析は、副作用の予測にも役立ち、ひいては患者さんの医薬品の適正使用につながります。

 医療者にとっては、薬物治療において、エビデンスに基づいた医薬品の有効性、安全性、費用対効果を客観的に評価比較し、薬物治療の評価のあり方を理解し、必要とされるときに適切な形で、医療者、患者に情報を提供することは、薬剤師に課せられた社会的責任と言えます。

研究概要

患者と医療者を結ぶ医薬品情報―創出から応用まで―

医薬品のリスクコミュニケーション・リスク管理に関する研究

 医薬品に関し、患者の安全性確保はもとより,リスク・ベネフィットの評価や適正で効果的な使用,公衆衛生の改善,経済的損失の低減,その他セルフメディケーションの普及の観点から,安全性問題を科学的に検証し,それをいかに効果的に伝え,問題解決につなげるかといったことがファーマコビジランス(医薬品の安全性監視)において重要と考えられている。そのための研究の一環として、一般消費者の医薬品情報、特に安全性情報に対する認識調査等を実施し、リスクコミュニケーションについての検証や調査を行っています。

消費者・患者向け医薬品情報のあり方と評価手法の開発

 国内外の患者向けの医薬品情報の状況調査の結果を踏まえ、患者向の医薬品情報のあり方の検証を行っている。また、国内で患者向けに出されている公的な医薬品情報提供書である「患者向医薬品ガイド」について以下の研究を行っています。

  • 利活用および普及に向けたIT 技術を含む伝達方法の検討
  • 理解度調査(ユーザーテスト)および可読性分析の開発

 患者向けの医薬品情報の有用性を考えるとき、消費者・患者参画(Patient involvement)は重要なファクターであり、その意見を反映することが求められる。患者にとって、その情報は読みやすいか(Readability)、理解できているか(Understandability)、情報を見つけやすいか(Accessibility)を検証しそのエビデンスを示す必要があり、その評価方法としてユーザーテストがある。「患者向医薬品ガイド」や小冊子やリーフレットからウェブ情報まで消費者の健康・医療情報の有用性に関する評価手法において、国内におけるベストプラクティスを検討し、提言します。

参考サイト:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「患者向医薬品ガイド」
https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/items-information/guide-for-patients/0001.html

医薬品適正使用に関する研究

Academic Detailingのシステム開発

 医薬品の適正使用は患者の安全性確保はもとより不要な医療費の削減に大きく貢献します。そのため薬物治療に関しエビデンスに基づき評価した情報を普及させ、患者の安全性担保と費用対効果を考慮した処方の改善は喫緊の課題です。その対策の一つとして、欧米ではAcademic Detailingのシステムやプロジェクトが普及し効果をあげています。Academic Detailingとは、Academic Detailerによる医療者に対する双方向的な教育的アウトリーチの手法です。このような活動に関する教育プログラム、人材養成を目的とした” Academic Detailing”のモデル構築に関する研究では、患者、医療者間の双方向のコミュニケーションを通して、個々人の情報リテラシー能力アップとともに、医薬品の適正使用に向けた情報体制の整備に向けた取り組みを行っています。

構築サイト:http://www.ad-di.jp/

計算科学を用いた医薬品の副作用予測

 患者さんが医薬品を使って治療を行っている際、治療の継続が困難になる場合があります。その一例が医薬品による重篤な副作用発現による治療中止です。治療が中止になることは、病気の治療が困難になることに繋がります。そこで、このような医薬品の副作用が事前に予測することが出来れば、副作用を予防する対策がとれます。

 我々は、医薬品の副作用を予測するためのツールとして、計算科学を用いて研究を行っています。医薬品は人間の体の中のタンパク質などと結合することでその効果や副作用が現れます。特定の副作用を引き起こす医薬品とその原因となるタンパク質がどのように結合しているかを計算科学によってシミュレートし、その結果に規則性が無いかを調べています。

教員紹介

長南 謙一 教授 / 学位:博士(医療薬学)

  • 研究分野:医薬品情報学、医療薬学、臨床薬学、薬害、社会薬学
  • 担当科目:医薬品情報学(4年前期)
    薬物治療評価学(4年後期)
    臨床実習事前学習Ⅰ(3年後期)
    臨床実習事前学習Ⅰ(4年前期)
    臨床実習事前学習Ⅱ(4年後期)
    専門薬剤師を目指して(6年前期)

医薬品は、情報の付加価値が極めて高い商品です。適切な情報がなければ、医薬品の臨床での適正使用はありえません。医薬品情報を利用し、医薬品の有効性・安全性・経済性を評価する研究に取り組んでいます。

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土肥 弘久 准教授 / 学位:博士(薬学)

  • 研究分野: 
  • 担当科目:医薬品情報学:4年次
    実務実習事前学習Ⅰ:4年次
    実務実習事前学習Ⅱ:4年次
    医薬開発特論Ⅱ:5年次

 

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大和 幹枝 助教 / 学位:博士(薬学)

  • 研究分野:薬学教育、統計学
  • 担当科目:医薬品情報学:4年前期
    臨床実習事前実習1:4年前期
    臨床実習事前実習2 :4年後期
    薬物治療評価学:4年後期
    病院薬局実習:5年前期・後期
    アドバンスト実務実習:6年前期
    早期体験学習:1年前期・後期

 

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