お知らせ・トピックス

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11.10(TUE)2020

高脂血症治療薬標的タンパク質PPARalphaとリガンドとの共結晶構造34種を解明し、iScience誌に発表しました。

HMG-CoA還元酵素を標的とするスタチン系薬に次いで汎用される高脂血症治療薬のフィブラート系薬は1960~80年代に開発されましたが、当時その標的は不明でした。その後遅れて、脂質代謝を中心に代謝全般を制御する主要転写因子・核内受容体PPAR (Peroxisome Proliferator-Activated Receptor)αがその標的と分かりました。そして2001年に別化合物との複合体として初めてPPARα(リガンド結合ドメイン:LBD)の結晶構造が報告され、リガンド結合に伴うPPARα活性化の基本メカニズムが明らかになりました。しかし、多数の報告例のあるそのファミリー分子(PPARγ及びPPARδ)と比べてPPARαは結晶化が特に困難で、これまでわずか21種類の結晶構造しか報告されておらず、フィブラート系薬の結合状態は全く不明でした。つまり全世界で何千万人の高脂血症患者は、作用機序が明確ではないフィブラート系薬を長年服用してきたことになります。このたび本研究室は、臨床で使用される6種のフィブラート系薬や内因性活性化リガンドとして働きうる内在脂肪酸などがPPARαLBDに結合している良質の結晶をSoakingやSeeding、脱脂など様々な手法を駆使して作成し、過去の全報告数を上回る34種の結晶構造(別手法により決定した同一構造の重複を一部含む)を、かつてない高解像度のX線構造解析にて一度に明らかにしました。また、ボランティア学生を対象とした採血検査などの生化学解析を行い、主要な内在脂肪酸(パルミチン酸とステアリン酸)が天然リガンドとなることを示しました。現在PPARファミリーは代謝関連疾患の創薬標的として注目されており、本研究の成果は今後大きな波及効果を生むと期待されます。本研究の成果は国際学術誌iScienceに11月20日付で掲載されました。

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