ウイルスの免疫回避last update : 2016.06.27

発がんウイルスによるユビキチン化を介した宿主免疫回避システム

 

ヒトの細胞はウイルスに感染した場合、それを免疫細胞(CD8+T細胞)に知らせるシステムを持っています。感染細胞を発見した免疫細胞が活性化してこれを排除することによって、ウイルス感染の蔓延を防いでいるのです。しかし、発がんウイルスであるカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(Kaposi’s sarcoma associated virus: KSHV)は、ヒト細胞がウイルス感染を免疫細胞に知らせる免疫関連膜タンパク質、MHCクラスI(MHC-I)を消失させることで、免疫から逃れて生き残ることができます(図1)。

 

この免疫回避を可能にしているのは、KSHVがつくるウイルスタンパク質、MIRです。MIRはMHC-Iをはじめとする様々な免疫関連膜タンパク質を識別して、それぞれにユビキチンという小型タンパク質を付加する酵素(ユビキチンリガーゼ)です。ユビキチンが付加された免疫関連膜タンパク質は細胞内に取り込まれるために細胞の表面から消えてしまいます(この現象をエンドサイトーシスといいます)。すなわちKSHV感染細胞ではMIRの標的となった免疫関連膜タンパク質が細胞表面から消失してしまい、免疫細胞に感染を知らせることができなくなっているのです(図2)。

 

私たちはKSHVの免疫回避分子であるMIRが免疫関連膜タンパク質を識別してユビキチン化するメカニズムについて、詳細に明らかにしようとしています。現在、KSHVに対する効果的な抗ウイルス薬はありませんが、私たちは免疫回避分子MIRの解析を起点にこれを制御する方法を見いだし、新たなカポジ肉腫治療法の開発につなげることを目指しています。

 

 

この研究内容に関する論文

The intertransmembrane region of Kaposi's sarcoma-associated herpesvirus modulator of immune recognition 2 contributes to B7-2 downregulation.

Kajikawa M, Li PC, Goto E, Miyashita N, Aoki-Kawasumi M, Mito-Yoshida M, Ikegaya M, Sugita Y, Ishido S.

J Virol. 86(9), 5288-5296, 2012

 

Contribution of lysine 11-linked ubiquitination to MIR2-mediated major histocompatibility complex class I internalization.

Goto E, Yamanaka Y, Ishikawa A, Aoki-Kawasumi M, Mito-Yoshida M, Ohmura-Hoshino M, Matsuki Y, Kajikawa M, Hirano H, Ishido S.

J Biol Chem. 285(46), 35311-35319, 2010

 

MARCH-I: a new regulator of dendritic cell function.

Ishido S, Matsuki Y, Goto E, Kajikawa M, Ohmura-Hoshino M.

Mol Cells. 29(3), 229-232, 2010

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